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Table-2 Relationship between purification works and applied technology

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両者の関係を定性的にみて整理したものである。これでみると、一つの利用技術は一つの浄化工法にほとんどが1:1で対応している。例外は礫間接触酸化堤とブラントによる浄化の二つである。ブラントは効率はよいが設備費、稼働費が掛かり経済的でなく、流出油による汚染など特別な場合に使われる。
礫間接触堤は礫石の表面に付着した微生物膜が、潮汐によって礫間を通過する海水中の栄養塩類を吸収して浄化する機能を持っている。その上堤体の形状をして二つの水域の間に設置されるため法面下部は藻場になり、法面上部は砕波帯として曝気作用がある。更に堤であるために海浜流がぶつかると法尻の底泥を巻き上げること、礫間を通過した潮汐流が流入した水域に希釈効果を持つことなどがある。これらのことは太陽光、波浪、海浜流、潮汐流等の自然のエネルギーをうまく利用して、様々な浄化効果を上げる利用技術として大変有用なものである。
底質浄化工法の利用技術である底泥除去、現位置固化および覆砂による溶出止めについての適用は、底泥厚、有機物含有量、粒度分布、水深、透明度、ベントスの種などを考慮して決めることになる。
施設整備と利用との関係は多岐に亘り、施設の状況によって浄化効果に差が出る。干潟、砂浜、礫浜、緩傾斜石積護岸、藻場、浅場の何れにもベントス類、微生物、プランクトン類は存在しそれぞれに活躍してくれる。海藻類、魚類、鳥類も手助けしてくれる。防災または防護施設である離岸堤、突堤、人工リーフ、防波堤と消波ブロック、海岸防潮堤防なども、生物による浄化効果を持っているので、配置や構造を工夫することにより有効な浄化施設になりうることもある。
海域整備事業では、各種の工法および施設整備を、その海域の状況に合わせて、一つまたは複数を選択し、最もよい浄化効果を狙って計画するものである。
3. 評価方法の種類と特徴
従来、海岸整備の場合防災機能が最も重視され、次に建設、維持コストの経済性が検討され、生態系への影響についてはほとんど考慮されなかった。それが経済基盤がほぼ整った1980年頃より、都市周辺での自然環境の破壊、自然海岸の減少等が注目されはじめ、一般市民の意識も環境問題に向いてきた。自然破壊の実体が科学的にも少しずつ明らかになるにつれ、行政もインフラ整備、都市・地域開発から、環境保護、環境保全、環境創造へと次第に変化してきた。最近では自然との共生が言われ、環境整備の分野では自然環境の回復を考慮した海岸および港湾構造物が計画され、実施されている。
自然環境面への配慮は、当初は大気汚染、水質汚染、振動、騒音、悪臭、土壌汚染、地盤沈下の7種の公害が生じ、人の健康と生活環境が直接的に害されることへの対応から始まり、それが自然環境保護へ波及していったものと考えられる。公害対策の時に、水質に関して人の健康および魚類の生存に対して安全であるための工場廃水基準および水質基準が案出された。これらは有害物質含有量、COD、DO、SS、T-N、T-Pなどに関するものであった。次に大規模開発事業に対して環境アセスメントの実施が義務づけられ、計画段階における手続き法が整備され、多くの自然条件調査および環境の変化予測をもとに審議されることになった。
その後世界的にも地球環境問題に関わって自然環境問題が取り上げられる二とになり、1992年の国連環境開発会議を契期として急速に、生物に関する情報や環境指数および研究活動が重要視されることになった。
生物に関する科学的知見や研究成果は、現在大変な努力によって増やされているが、環境基準値として定量的に整理し取り上げるにはまだ不十分と思われる。従って当面は定性的に評価し判断する方法がとられている。
最近多くの学識経験者により、人を含めた生物および生態系の安定性については、生物多様性が存在していることが必要であると言われている。このことは環境庁の文献の中にも例える。
生物と物多様性については、生態系、年物種、遺伝子の三つの側面からみることができるものと思われる。この関係をTable-3に整理した。

Table-3 Observation items and characteristics for biodiversity

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生態系については食物連鎖の面から見ると解り易い。地球上の食物連鎖の輪の数は、相互に入り交ってはいるものの、陸上で3、海中で10以下と言われている。連鎖の状況は細菌類が有機物を分解する、それを栄養源とし

 

 

 

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